Life Itself

生活そのもの

細野晴臣@都久志会館

今日は都久志会館細野晴臣さんのライブ。
 
3月の新アルバムの全容が明らかになっていくにつれて、今回のツアーへの期待も増していった。『Hochono House』。ファーストソロ・アルバム『Hosono House』の全曲セルフカバー。曲順は逆であるようだ。僕にとっては『Hosono House』が細野さんを本格的に好きになったきっかけでもあり、今でもよく聴く、数多い細野さんのアルバムの中でも最も好きなアルバムと言ってもいいくらい好きなアルバムである。そのアルバムを、今の細野さんがセルフカバーをする。期待せずにはいられようか。
 
ところが、今日の細野さんのライブはその期待を無視するかのように、今度アルバム出すんだけどさぁとさらっと言うくらいの感じで、いつもと同じ感じでライブは進行していく。『Hochno House』と言っていいのか『Hosono House』と言っていいのかわからないが、とにかく新アルバムに関連する曲は、アンコールあわせて3曲しかやっていなかったと思う。それ以外はここ数年の細野さんのライブの感じ。最初はゆったりめの曲から入り、途中オリジナルを数曲、バンドメンバーのグッドラックヘイワ高田漣さんのソロを挟んだあとの後半はブギウギ。いつもと何ら変わらなかった。
 
ただ、『Hochno House』/『Hosono House』からの3曲はとても良かった。中でも印象に残ったのは『住所不定無職低収入』で、聴いていると懐かしい感じがしてきて、この懐かしさはどこからきているのだろうと少し考えてみたら、Levon HelmのMidnight Rambleだった。8年前にウッドストックで観たLevon Helmのライブと雰囲気が似ているような感じがしたのである。そもそも『Hosono House』が好きになったのは、The Bandと似たものを感じたからだった(同じ時期にニューオリンズ音楽を聴いていた僕は、トロピカル3部作、特に『泰安洋行』でぶったまげることになった)。『住所不定無職低収入』には、亡くなる前に精力的に活躍していたLevon Helm Band、あとはThe Bandでもどちらかといえば再結成後の感じや『Moondog Matinee』を思い起こさる感じがある。あくまで個人的な印象だが、高田漣さんにはラリーキャンベルと同じようにバンマス的な立ち位置でバンドをまとめている印象を受けるし、グッドラックヘイワの野村さんが入ってからは、ガース・ハドソンやブライアン・ミッチェルのように音に深みを与えているように感じがある。
 
思えば、Levon HelmのThe Midnight Rambleも全く肩を張ったところがない自然体のライブで、それはThe Midnight RambleがLevonの家であり、日常の延長線上にあるものだったからかもしれない。週末にだけ自宅のスタジオで行われるライブ。日常の中のちょっとした非日常。日常の延長にあらわれす少しだけ派手な楽しみ、催し。
 
今回の細野さんの『住所不定無職低収入』からLevonのライブを思い出したが、細野さんのライブはLevonのライブ以上に自然体だ。観る側を一切緊張させない親しみやすさがある。アルバムを出したからといって特別なことはしない。いつもの細野さんだ。ライブ中はそのいつもの細野さんの音楽にただ身を委ねているだけでよい。