Life Itself

生活そのもの

Levon Helm『Ramble At The Ryman』

職場近くのレコード屋でLevon Helmの『Ramble At The Ryman』を見つけ、購入した。

LPで聴いてWoodstockのMidnight Rambleに行った時のことを思い出した。CDも持っているが、CDではそこまで思い出すことはなかった。気持ちの問題かもしれない。

あの日Levonはライブが終わってライブに来ていた全ての人々に挨拶をし、僕のところにも来て握手をしてくれた。何も声を掛ける言葉が見つからず、「I came from Japan. Thank you!」とかそんな程度のことしか言えなかったように記憶しているが、Levonは「All right!」と言ってくれた。目が合った、握手をした、手は思ったよりも大きく硬かった。Levonの手の感触だけはしっかりと覚えている。ライブのことはあまり思い出すことはなかった。Woodstockまでわざわざ行ってライブを見ることに対してどこか気負いすぎていて、あっと言う間に時間は過ぎていった。一生覚えておくんだと思っていただけで、その場に心があったのかわからない。最初の曲は『W.S. Walcott Medicine Show』だった。最後はもちろん『The Weight』だった。

Levonはライブ中の曲の間はずっと鼻を噛んでいた。何曲か歌っていたけれど、声はかすれていて歌いづらそうだった。それから1年少しでLevonは亡くなった。

僕はライブのことをほとんど覚えていないと思っていた。気負いすぎていて、空回りしていて、Midnight Rambleでのライブを行く前からあまりにも理想化しすぎて当日は戸惑いを感じて、ライブ中は心がそこになくて記憶として残らなかったのだと思っていた。だが、今日『Ramble At The Ryman』を聴いて、当時のライブ会場のこと、自分がどの場所からみていたのかとか、一番前に座っていたノリノリの若者のこととか、そもそも若者がとても多かったこととか、途中楽器隊が演奏しながら会場をぐるぐる回ったこととか、近くを通ったオルガンのBrian Mitchelがすげーでかかったこととか、Levonのドラムを叩く姿は全く派手ではなくて、でもノリノリですごくごきげんに叩いていたこととか…。今まで思い出さなかったあの日のライブのことを今回LPを聴いたことで思い出した。『Anna Lee』は確かその日歌っていなかったけれど、LPで聴いていると、Levonの歌う姿が蘇ってくるようだ。