Life Itself

生活そのもの

2017/12/10

妻にある漫画を買ってくるように頼まれたので、昨夜本屋に行ったのだが、ついでに文庫本のコーナーを見ていた時に見つけた川上未映子の『きみは赤ちゃん』。ぱらぱらと少し立ち読みをして、これは今のタイミングとして読んでおきたいと思ったので漫画と一緒に買って、昨夜から少しずつ読んでいる。まだ買ったことを妻には話していない。

 

この本はタイトルが示すとおり、川上未映子さんご自身が体験した出産と産後にまつわるエッセイだ。時系列順に書いてあるから、自分達の状況と照らし合わせながら読むことができるし、これから先の未体験ゾーンへの覚悟や期待を持つきっかけとして読むことができるのではないか。また、川上未映子さんが出産したのが35歳でいわゆる高齢出産だったらしく、34歳で出産する予定の妻と状況が似ているというところも参考になると思った。ちなみに、川上未映子さんの小説は全部を読んでいるわけではないけれど、『わたくし率 イン 歯ー、または世界』や『乳と卵』などはとても面白く読んだ。文体が独特で、そのリズムがとても読みやすく、エッセイ本を読むのは今回が初めてだけれど、川上未映子さんの本であれば信頼して読むことができる。

 

この本は、妊娠検査薬で陽性反応が出たところから始まっているが、昨夜はつわりに関する章まで読んだ。ちょうど今、妻はこのつわりを時期にいて、人によって症状は違うとわかりつつも、川上さんがどれだけつわりに苦しんだかを読むと、妻が今どんな感覚でどれだけしんどい思いをしているのか改めて感じたし、でもやっぱりそのしんどさというのは体験している本人でしかわからない、僕にできることはつわりの辛さ以外にさらに負担が増えるようにしないためにできることをするしかない、ということを思った。

 

で、つわりの次の章に書かれていることが、「出生前検査を受ける」。妻もこの出生前検査を受けることを望んで、10日後くらいに受ける予定となっている。検査を受けるか受けないかに関しては、僕は基本的には妻の意思に任せるようにしたが、妻も出生前検査を受けるということに対して結構悩んだようだった。検査を受けることについては任せたもの、検査の結果に対する不安というのはもちろん僕にもあるし、もし検査で何かが見つかったらどうするのか、ということについては結論を出すことができていない。

 

昨夜の時点では「出生前検査を受ける」以降は読むつもりがなかった。検査を受ける前に読むのではなくて、検査を受けてからその後に読む方がいいんじゃないか、となんとなく思ったのだ。検査結果に対する覚悟を持てているわけではないのだから、もっと自分で妻と2人で考えたほうがいいのではないのか、と。でも、出生前検査を受ける人ばかりではないのだし、それは受ける人の選択によるものなのだから、川上未映子さんもご自身でしっかりと選択をして受けているはずだ。覚悟を持って検査を受けたのか、どのような覚悟を持ったのかも気になる。そう思って、やっぱり読むことにした。

 

この章では、川上さんの心の葛藤が描かれていた。

やはり出生前検査を受けるということには、もし検査結果に何か見つかった時にどうするかということへの覚悟が問われる。出生前検査を受けることで、検査結果によっては堕胎するのか育てるのかという選択をしなければならない。

川上さんもいろいろな葛藤があって出生前検査を受けることにしたのだが、お腹で育まれている命に異常があるのかをまずは「知りたい」という気持ちになったらしい。

 

とにかく、少しでも早く問題を把握して、そして、心の準備や現実的な対処をしなければ。気づけば、そんな気持ちがいちばんになってしまっていた。

(2017 株式会社文藝春秋 川上未映子 『きみは赤ちゃん』pg34)

とにかく知る。知ってから、考える。

(2017 株式会社文藝春秋 川上未映子 『きみは赤ちゃん』pg35)

 

僕も、そして妻も、お腹の中の命に異常があるのかないのかを「知りたい」そして「安心を得たい」という気持ちで出生前検査を受けることに違いはない。ただ、実際に検査も受けていない現段階で軽々しく何を言うこともできないし、僕自身覚悟ができていないのだから言う権利もないと思う。

 

でも、でも。病院の先生には着床することが難しいと言われていたにも関わらず、着床して、そして現時点では順調に育っているお腹の中の命のことを考えると、とても、とても愛おしいのだ。それだけは言える。覚悟はできていないが、もし何かあってもこの気持を今持っているということは忘れずに選択をしなければならないと思う。