Life Itself

生活そのもの

初めて舌で音を鳴らした日

赤ん坊が僕や妻の真似をするようになってきた。真似をするようになったのは1,2週間前くらいだったが、最近その真似の精度が上がってきたというのか、確実に真似をされているなと分かるようになってきた。
バンザイやバイバイといった動きもそうだが、唇を震わせて出す「ブブブブ」といった音や、「パパパパパ」といった音も真似するようになっている。これを書いている間にも、妻が部屋にやってきて、また新たな音を出すようになったという。見に行くと、とても嬉しそうに満面の笑みで「タッタッタ」と舌打ちの音を鳴らしていた。
 
僕は初めて舌打ちをした日のことまでは覚えていないが、口笛を吹いた日のことは覚えている。それは、僕が口笛を吹けるようになったのがだいぶ遅かったからだ。中学2年のとき、口笛を吹くことができないことが急に悔しくなって、授業中にも口を隠してずっと口を尖らせて練習した。1週間くらいで吹けるようになったと思う。吹けるようになったときはとても嬉しくて、あまりに嬉しかったから夜中ずっと口笛を吹いていると、「不快やけん止めろ。下手くそが。」と寮の同じ部屋のやつに言われて、それがショックでそれ以降あまり吹かなくなった。だから、僕は口笛を吹くことはできるが、下手くそなままだ。口笛を吹けたことの嬉しさとそのショックが一緒になって、そのときのことは今でもよく覚えている。
 
赤ん坊は手を叩いて拍手のようなことをしようとしているが、まだはっきりと音は鳴っていない。綺麗な音が鳴るのも時間の問題だろうが、そこに至るまでの過程をそばで見ることができることは幸せなことだ。できれば今日のように、きちんと鳴らした瞬間の笑顔をまた見たい。