Life Itself

生活そのもの

顔を抓る赤ん坊

ボーネルンドのおもちゃが置いてあるお店では、赤ん坊や小さい子どもが遊ぶことができるようなスペースがあって、遊んでいる赤ん坊・子どもが少なくて娘の機嫌のいいときには遊ばせるようにしている。
 
比較的そのスペースが空いていたことので、今回も娘を遊ばせることにしたのだけれど、内弁慶の娘だから、スペースに放っても控えめにしか遊ばない。家の中にいるときのような暴れん坊っぷりを見せることはない。それはそれで安心ではあるのだけれど、もし娘が夢中になってボーネルンドのおもちゃで遊ぶようなことがあれば、いつでもそのおもちゃを買ってやるつもりでいるし、なんなら少しでも気に入った素振りさえ見せてくれればレジに向かうのだが、娘はただただおとなしい。
 
今回もしばらくはおとなしく遊んでいたのだが、1メートル先くらいに同じ月齢くらいの女の子がつかまり立ちをして遊んでいた。それを見つけた娘はハイハイして近づいていった。
こんなことは初めてだった。大人と遊ぶことはあっても、他の赤ん坊と触れ合うようなことは今までなかった。僕と妻は驚き、そして嬉しくなってその様子を見守っていたところ、娘も同じようにつかまり立ちをして、その女の子の方を見て機嫌良さそうにキャッキャッと笑いかけていた。ついに、ようやく、ついに娘も他の赤ん坊と遊ぶことになったか、と妻と顔を合わせようとした瞬間、娘は女の子の顔を抓ろうとした。
娘は妻や僕の顔、とくに鼻や口を抓ることが多いのだが、まさかその女の子にも同じことをするとは思わなかった。顔を抓られると、力の手加減がないから、とても痛い。あまりの痛さに思わずギャーと声を上げてしまうくらいには痛い。そんなことを赤ん坊んの女の子にしては大変だ。抓ろうとしたその瞬間、すぐに妻が阻止したが、たぶん少し女の子に触れてしまっていた。幸い、女の子はほとんど何の反応もなく、なんなら少し機嫌良さそうにしていた(「幸い」という表現も使うべきではないかもしれないが、女の子の顔に傷跡や爪で引っかかれた跡はついていなかったから、「幸い」、たぶん触れただけだったのだ)。ほっと安心したのも束の間、娘は二度目の攻撃を仕掛けようとした。それも女の子に少し触れてしまった。痛そうにしたり泣いたりはしなかったけれど、女の子は少しだけ興奮した様子を見せ、妻の方に寄ってきた。妻は自分の顔を差し出していた。わが娘がごめんね、この顔でよければ自由に遊んでいいよ。
 
赤ん坊はあと2ヶ月ちょっとで保育園に入園することなる。今回の1件で、入園が恐ろしくなった。入園後も、娘は他の子の顔を抓るのではないだろうか。無邪気で手加減のない力で抓ってしまうのではないだろうか。
しかし、抓るのはだめだと教えるにはどうしたらいいのだろう。僕らの顔を抓ることは、赤ん坊なりのスキンシップの1つだと思っていた。痛くはあるが、それで赤ん坊が楽しそうにしてくれるのであればそれでいい。しかし、妻と僕以外にも抓るのは問題だ。ことばで言ってわかるものではない。妻と僕の顔を抓ったときにも少し怒ったような顔をすればいいのか。それを痛いのだと、もっと赤ん坊にアピールすればいいのか。これから本を読んだり他の人の話を聞いて、なんとか赤ん坊に伝えていかなくてはいけない。