Life Itself

生活そのもの

2018/12/29

書店に行くといつも絵本コーナーをのぞいて良さそうな絵本があれば赤ん坊に買ってあげることにしているが、今日絵本コーナーにいて、ふとしばらくの間絵本を読み聞かせていないことに気づいた。赤ん坊が絵本が好きであることは、その反応から確実にそうだと言えるだが、どうしてもおもちゃで勝手に遊ばせてしまうことが多い。絵本を持ち上げて読む必要があるので、数冊読むと腕がパンパンになってしまう。読ませるということは時にしんどく感じることがあるのである。特に赤ん坊の絵本はセリフがほとんどなく、絵もシンプルなので読んでいる方も飽きてくる。
 
絵本を読み聞かせると言っても、読み聞かせる親の方も一緒にその本を読むことになる。すべては赤ん坊のためとは言え、僕ら親にとっても面白いものであるほうが読む気にもなる。
そういった意味において、最近出会った絵本の中で最も面白かったのは、安西水丸の『りんごりんごりんごりんごりんごりんご』である。面白いのはストーリーというよりは、見開きの各1ページに必ず表題の「りんごりんごりんごりんごりんごりんご」のセリフがあることである。このセリフをリズムよく声に出すのがとても気持ちいい。あまりにリズムが気持ちよくて、それを発しているときの僕の声色がいつもと違うからか、赤ん坊は絵本そのものを楽しそうに見るだけでなく、「りんごりんごりんごりんごりんごりんご」と言った後の僕の顔も必ず見てくる。このセリフにすっかりハマってしまって、絵本を読んでいないとき、街にいて赤ん坊に話しかけるときなんかも「りんごりんごりんごりんごりんごりんご」と言ったりする。たまに妻も言っている。
忘れずに言っておくと、絵本『りんごりんごりんごりんごりんごりんご』の絵は、安西水丸さんらしい絵で、可愛らしくほっこりして僕は好きだ。
 
この『りんごりんごりんごりんごりんごりんご』の絵本ですら、ここ1週間くらい読んであげていなかったかもしれないが、「りんごりんごりんごりんごりんごりんご」のセリフ自体は数十回と言っていったように思う。セリフを言うことで赤ん坊があの絵を思い浮かべたりすることはないだろうし、言っている僕ですら絵本のことが頭にあるわけではないけれど、セリフを言うときは、絵本を読むときと同じように赤ん坊と僕(そして妻)に向けて発している。言葉だって投げかけるものだけれど、発している自分自身に作用しなければ面白くないではないか。「りんごりんごりんごりんごりんごりんご」と書いてきて、在日ファンクのハマケンがそんな歌詞を歌っていそうだなと、いま考えた。
 
今日、絵本『りんごりんごりんごりんごりんごりんご』を久しぶりに読んであげた。赤ん坊の反応はとても良かった。やはり、セリフだけよりも絵が一緒にあった方がいいに決まっている。それは分かっているのだ。