Life Itself

生活そのもの

2018/04/13

Bob Dylanの『Blood On The Tracks』の国内初盤LPを購入した。『Tangled Up In Blue』を聴いたときは、これまでCDで聴いたのとは全く印象が違って驚いた。CDよりもずっと落ち着いた感じに聴こえる。この曲に関してはLPの方が好みだ。一方で、『Idiot Wind』についてはCDの音の方がいい。感覚的なものだし、聴く時の気分も大いに関係しているかもしれない。

先日、Sam Cookeの『Live at the Harlem Square Club』のLPを見つけて購入した。あらゆるライブ盤の中でも一番聴いたアルバムだと思う。初めて聴いたのは12,3年前だったと思うけれど、いつ聴いても『For Sentimental Reason』でSam Cookeに続いて観客が合唱するところで興奮して震える。このライブでのSam Cookeは、天使というよりは悪魔のように感じる。人々を扇動して感情的にさせ、我を忘れるほど興奮させている(きっとそうだ。僕なら我を忘れるほど興奮するだろうし、このアルバムを聴けばSoul Stirres時代にSam Cookeの歌声で失神する人がいたというのも納得する)。他のアルバムやもう一つのライブ・アルバムの『At The Copa』のように綺麗な歌声ではなく、しゃがれ声だ。だが、それがとてもとても魅力的なのだ。

この『Live at the Harlem Square Club』は何度聴いても感動するけれど、それでもやはり最初に聴いたときほど衝撃を受けることはないし、12,3年前に毎日のように聴いていた時の感覚はなかなか蘇らない。レコードを購入して、また最初に聴いたときと同じような興奮を味わうことができるのではないかと少し期待したけれど、そんなことはなかった。12,3年前に毎日車の中で聴いた時の感覚すら蘇らない。当たり前といえば当たり前だ。音楽は反復でもあるけれど、1回限りの体験なのだ。同じアルバムを聴いても、それが1回1回の体験であることには変わらない。

それでも『Live at the Harlem Square Club』はこれからはレコードで聴くだろう。レコードの方がボーカルが全面に出て、またこれまでとは違った感覚で聴くことができるし、ライブ盤ということを考えると、CDよりもライブらしく、実際にライブ会場にいるような感覚を味わうことができる。だが、『Live at the Harlem Square Club』で僕がずっと求めているのは、ライブ感ではなく、最初のあの衝撃なのだ。いくら聴くメディアや環境を変えても、あの衝撃をもう一度体験するのは難しいだろうけれど。難しいとはわかってはいるけれど、あれと、あれと似たものを僕はこれからも求め続けていく気がする。